総悲観は買い? 総楽観は売り?
ベイズの定理
P( A | B ) = P( B | A ) * P( A ) / P( B )
P( A ) = 事象Aが発生する確率
P( A | B ) = 事象Bが発生したときにさらに事象Aが発生する確率
株式投資の格言のひとつに、総悲観は買いというのがあります。
悪い材料が重なり、誰がどう考えても株価が上がりそうにない、
という状況では敢えて買い向かうのが賢い、という意味です。
例えばバブル後の最安値をつけた2003年がそんな感じです。
多少の上げ下げはあったものの、1990年から10年以上も株価が下がり続け、
日本はこのまま破綻してしまうのでないか、という人すらいました。
しかしその後日経平均株価は上げ続け、8,000円だったのが実に2倍以上になりました。
まさにあの時買っておけば大儲けできたわけです。
逆の格言として、総楽観は売りというのもあります。
みんなが楽観していて、株さえ買っておけば何も考えなくても儲けることが出来る、
というような雰囲気があるときは危険だということです。
例えばバブルの最盛期がまさにそんな感じです。
日経平均株価は4万円近くまで上昇し、そのまま5万、10万まで上昇すると、
結構な数の人が真剣に信じていました。
しかしバブルは弾け、その後10年以上に渡って下げ続けることになったのです。
このように、総悲観は買い、総楽観は売りという言葉にはある程度の信頼性があるのですが、ひとつ気を付けなければいけない事があります。
ここでは、ベイズの定理を使ってそれを見ていきます。
事象A : 総悲観の状態にある
事象B : その後、株価が上昇する
とすると、総悲観は買いという格言が成り立つためには
P( B | A ) が大きくなければいけません。
つまり、総悲観の状態のときには高い確率で株価が上昇する、
ということを示す必要があります。
しかし、実はこれは正しくありません。
実際に高い確率で起こっているのは、
株価が上がったあとに考えてみると、底のときは総悲観だった、
という現象です。
つまり値が大きいのは P( B | A ) ではなく、P( A | B ) なのです。
上記の現象は株価がVの字で回復したときにはほとんど成り立ちます。
株価が反転する前には必ず下落局面があるので、
その状態のときには将来の株価について悲観している人が多くなります。
そこで反転して株価が上昇するわけですから、上がった後で、
あの時買っておけば…という気持ちになり、それが総悲観は買い
という言葉につながるわけです。
しかし、総悲観の状態がどれだけ続くのかは分かりません。
バブル崩壊後のように10年以上も下がりつづけることもあるのです。
結局、総悲観の状態のときに株価が上昇する確率が高いわけではないのです。
このように総悲観は買い、総楽観は売りという言葉は、
株式投資のリターンを高めるためにはほとんど意味がありません。
人の行く裏に道あり花の山
なども同じで、結局のところ株価の動きは予測出来るものではありません。
会社の成長や、金利などを無視すれば、株価の動きは結局ランダムウォークなのです。
順張りしようが、逆張りしようが、他の人と同じ事をしようが違うことをしようが、結局のところリターンに差は出てきません。
人の意見や雰囲気に流されて売買しても、結局は手数料を取られるだけ、という気がします。