デイトレで大儲けする人
デイトレで100万円が1億円以上に、
みたいな話がよく話題になりますね。
いったいどういう仕組みなんでしょうか?
株式投資の世界では、参加者の90%以上が負けている、
といったような事がよく言われます。
正確な数字は定かではありませんが、
個人投資家のほとんどが負けてしまうのは本当のようです。
しかしその一方で、100万円が1億以上になったとか、
株で数十億円の儲けが出たというような個人投資家もいます。
ここではその仕組みを考えてみます。
例題として、次のような非常に単純化したケースを考えます。
- 最初の持ち金は1万円
- 毎日5割の確率で+10%か-10%
- 常に全力投資
期待値としては(110+90)/2=100%ですが、
この条件で勝負をしたらどういった結果になるのでしょうか?
まずは1日後の結果
持ち金 |
確率 |
9000 |
50% |
11000 |
50% |
二人のうち一人は持ち金が9000円に、もう一人は11000円になります。
いたって当たり前の結果ですね。
では2日後の結果
持ち金 |
確率 |
8100 |
25% |
9900 |
50% |
12100 |
25% |
2日とも負けた場合は0.9*0.9*10000=8100円、
2日とも勝った場合は1.1*1.1*10000=12100円、
これはいいのですが、1勝1敗のときが少し不思議です。
0.9*1.1 = 1.1*0.9 = 0.99
なので10000円ではなく、9900円になってしまっています。
期待値が100%のはずなのに何故?
と思った人は平均利回りのページに書いた
相加平均と相乗平均の違いを思い出して下さい。
この場合の相乗平均は0.9*1.1の平方根で約99.5%になっています。
では次は10日後。ここからはグラフにします。

10日後
横軸が持ち金[万円]、縦軸がその持ち金になる割合を示しています。
点の数を数えると11あることからも分かるように、
左から、0勝の人、1勝の人、、、10勝の人、ということになっています。
一番負けたのはもちろん全敗の人で、3487円になっています。
逆に10戦全勝の人は、25937円です。
中央値は5勝5敗で、9510円、10000*0.995^10になります。
では20日後と50日後をまとめて

20日後

50日後
もうお分かりですね。
日数が経つに連れて右側の裾野がどんどん広がっていきます。
つまり、運のいい人が大金を手にしていくということです。
その他大勢は最初の所持金である1万円前後に固まったままですが、
中央値は10000円ではなく、7778円になっていますので半数以上の人は負けています。
ようするに、その他大勢が少しずつ負けて、
運のいい人が大勝する、という構図が出来上がることになります。
もちろん、実際の相場においては、
手数料、税金、相場全体の動きなどの複数の要因が絡んでくるので、
この計算の通りに行くわけではありません。
しかし、本質的なところは結構説明出来ているのではないかと思います。
ここで重要なのは、デイトレがうまいとか下手とかいった事が
計算の前提に入っていないということです。
世間では短期投機で成功した人は投機が上手い人だという風に見られます。
しかし、投機の上手い下手を考えなくても、
ここに示したような結果の違いが出てくるのです。
50日の例では66.4%の人は元本を割り込んでいますが、
一方で0.015%の人は資産を10倍以上に増やしています。
日本でデイトレをしている人が何人いるのかは分かりませんが、
大儲けしている人の割合は私の見る限りでは確率の範囲を越えるものではありません。
確かに市場の非効率性を利用して儲けている人もいますが、
ほとんどのデイトレーダーは
ランダムな市場の中でギャンブルをしているだけではないでしょうか?
もちろん私はそれを否定するものではありません。
宝くじは買わなければ当たりません。
それと同じで、市場に参加しなければ大儲けすることは絶対にありません。
ただし運が必要であるという事は理解しておかないといけません。
最後に、参考までに上の50日のグラフの横軸を対数にしたものを載せておきます。
対数をとってみると下の図のようにきれいな二項分布です。

50日後 (横軸対数)